ヘナについては、「染毛料としての有効性・安全性」と「美容・健康効果」を分けて考えることが重要です。
1. 白髪を染める効果 → エビデンスあり
ヘナ(Lawsonia inermis)の葉に含まれる**ローソン(lawsone)**という色素が、毛髪のケラチンと結合して発色します。これがヘナ染めの基本的な科学的メカニズムです。
したがって、
「ヘナには髪を着色する作用がある」
という点は、科学的に説明できます。
ただし、ヘナは基本的に脱色作用を持たないため、黒髪を明るくするカラー剤とは異なります。

2. 「髪にハリ・コシが出る」→ 体感はあるが、医学的エビデンスは限定的
ヘナのローソンがケラチンと結合することから、髪の表面や質感に変化が生じることは考えられます。
そのため、
- 髪がしっかりした感じ
- ハリ・コシが出た
- ボリュームが出た
- ツヤが出た
という使用感はあります。
しかし、「ヘナを使うと毛髪が健康になる」「毛髪が太くなる」といった効果を、質の高い臨床試験で明確に証明したエビデンスは十分ではありません。
ここは広告などで言われる「髪質改善」と、科学的に確認されていることを区別した方がよいでしょう。

3. 「白髪が黒髪に戻る」→ エビデンスなし
これは明確です。
ヘナによって白髪そのものが黒髪に戻ることを示す確かな医学的エビデンスはありません。
ヘナは白髪を染めるものであって、白髪の発生原因を改善するものではありません。
4. 「頭皮を健康にする」→ 十分な臨床エビデンスなし
ヘナやローソンについて、抗酸化・抗炎症・抗菌などの作用を調べた基礎研究はあります。
しかし、これらは主に試験管内や基礎研究レベルの話であり、
「ヘナを頭皮に塗ると頭皮環境が改善する」
と人で一般化できるほどの臨床エビデンスはありません。
5. 安全性 → 「純粋なヘナ」と「ヘナ製品」を分ける必要がある
ここは非常に重要です。
EUの消費者安全科学委員会(SCCS)は、評価した特定のヘナについて、染毛用途で安全と判断できるだけの情報があるとしています。ただし、この評価は特定のヘナ原料・条件に基づくもので、すべてのヘナ製品に当てはまるわけではありません。
さらに、純粋なヘナでも、ごくまれにアレルギー性接触皮膚炎が起こることが2026年の系統的レビューで報告されています。731件の文献から、純粋なヘナによるアレルギー性接触皮膚炎として条件を満たした報告は13件でした。
⚠️ 一番注意すべきなのは「ブラックヘナ」
「ブラックヘナ」と呼ばれる製品には、**PPD(パラフェニレンジアミン)**が添加されていることがあります。
PPDは強い感作性を持ち、ブラックヘナによってPPDに感作された後、通常のヘアカラーで重いアレルギー反応を起こすケースが報告されています。
さらに最近の製品調査でも、「ヘナ」として販売されている製品からPPDが検出された例があります。2025年の調査では、対象製品の一部に1~9%のPPDが含まれていました。
日本でも2026年、国民生活センターが酸化染料を含むヘナ製品によるアナフィラキシーについて注意喚起しています。
